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Story
02 「廃棄物」は価値ある
地上の資源
歴史と縁が実現したマレーシアでの
リサイクル事業

この世に無駄なものなどないーこの創業以来続く信念を胸に、アミタはこれまで4,000種類以上の廃棄物を100%リサイクルし、天然資源に代わる地上の資源へと生まれ変わらせてきました。

2016年には国内で培ったリサイクルの知見を活かし、自社初の海外工場を台湾にて開所。国内外での経験等を踏まえ、翌年5月に満を持してマレーシアへと進出し、現地企業とともに同国内初の100%リサイクル工場「AKBK循環資源製造所(現・アミタベルジャヤ循環資源製造所)」を立ち上げました。

マレーシアでのリサイクル事業が実現した背景には、一切の無駄を出さない独自の100%リサイクル技術と困難に挑戦し続ける社員の情熱、そして目指す未来の実現を本気で一緒に目指すベストパートナーとの出会いがありました。

Recycle

無駄だと思う気持ちがごみを生む

アミタのリサイクル事業は第2次オイルショックをきっかけに生まれました。天然資源の価格高騰や景気後退の影響を受けて、より安価な資源を必要としていたセメントメーカーに、天然資源と同じ成分をもつ廃棄物を代替資源として提案したのが始まりでした。当時は「大事な商品の原材料にごみを使うなんてとんでもない!」という考え方が一般的で、ほとんどの廃棄物が焼却・埋め立て処分されていた時代に、リサイクル資源の価値を理解して実際に使用してもらうことは容易ではありませんでした。しかし熊野(弊社グループ代表)は「この世に無駄なものなどない。自分たちが諦めてしまったら目の前のこれはごみとして処分されてしまう。何としてでも価値ある資源に生まれ変わらせる。」という強い想いを胸に、この心理の壁を超えるため、何度もなんども、ユーザー企業のもとに足を運びました。廃棄物を“天然の地下資源に代わる地上の資源”という意味で「発生品」と呼び、その回収から中間加工、さらに出来上がったリサイクル資源のユーザー開拓まで、統合的な資源循環の仕組みづくりに挑んだのです。

100%リサイクルを叶える技術「調合」

挑戦開始から約10年が経った1992年、日本初となるリサイクル資源製造工場、「姫路循環資源製造所」を開設しました。独自で開発した「調合」と呼ばれる技術により、製造所に受け入れたすべての廃棄物を100%リサイクルすることが可能となりました。

「調合」とは、多種多様な成分・性状の廃棄物を混ぜ合わせることで、天然資源の代替となる新たな資源を創り出すリサイクル技術です。まずは、それぞれの廃棄物の成分を元素レベルで分析し、リサイクル資源のユーザーであるセメントメーカーなどが提示する「こういう成分の資源が欲しい」という規格に合うように、複数の廃棄物の適切な組合せ(レシピ)を作ります。これを「調整」と呼びます。次に、そのレシピに基づき、廃棄物を混ぜ合わせます。これが「混合」です。調整のタイミングで、規格に対して問題のある成分が多く含まれている場合には他の廃棄物を用いて問題がない濃度にまで下げ、同様に必要な成分が足りていない場合にも、その成分を含む廃棄物を組み合わせることによって、常に一定の品質を確保します。つまり、アミタのリサイクル事業は廃棄物の中から良いものだけを抽出して再利用するという方法ではなく、単品ではリサイクルが困難な廃棄物をたくさん集めて、分析・調整・混合という一連の流れを通じて、価値ある資源として生まれ変わらせる調合技術を軸としているのです。そして、この技術は「不確実を集めて確実をなす」というアミタのコアコンピタンスとなっています。

姫路循環資源製造所の開設から数年が経過した1990年代後半、国内製造業の海外移転の流れを受けて、日本国内だけでなく海外市場にもビジネスチャンスが見込まれました。当時のアジア新興国では外国企業による生産活動の増加に伴い経済成長が進んだ反面、急激な工業化によって、かつて日本が高度経済成長期に経験したような環境問題や公害問題が発生するリスクが高まっていました。 今後も発展していくことが予想されるアジア諸国で「日本と同様の環境破壊の失敗を繰り返さない」「公害によって健康被害に苦しむ人を生みたくない」という想いと、そのためにアミタの技術や知見を活かすことが出来るという考えがアミタを海外市場へと突き動かしました。

事前の市場調査では、マレーシア以外にもタイやインドネシアが対象となりました。その中でもマレーシアは、国として廃棄物のリサイクル率を向上したいという意向があった反面、処理に関しては国営企業と国の間に独占的な処理事業契約が結ばれており、実態としては焼却・埋立による処分が大半を占める状況にありました。現地に拠点を置く日系企業や日本の商工会議所は、顕在化しつつある環境問題を何とかしたいという想いを持っており、さらにマレーシア環境省、環境局の中からもリサイクルへの動きが生まれつつあったことなどを受けて、マレーシアでの市場開拓にチャンスを見出しました。ここからアミタのマレーシアでの挑戦が始まりました。

歴史と縁による関係性の構築

1997年には、マレーシアのイポーという町でリサイクル工場建設に向けた契約が進んでいました。しかし、最終調印を目前にしてタイを中心にアジア通貨危機が発生。熊野はやむなく「撤退」の判断を下します。それから約15年後の2012年末、マレーシアでの事業開始に向けた活動を本格的に再開します。しかし、マレーシアで過去に導入事例のない「調合」技術を受け入れてもらうことは容易ではなく、処理業の許可取得も困難を極めました。なぜなら、当時現地では一部リサイクルされている廃棄物についても、不純物が少なく成分の純度が高いものに限られていたことから、複数の不安定な廃棄物を混ぜ合わせることで、安定したリサイクル資源を製造するという「調合」技術はなかなか理解されなかったのです。

このような状況を打破すべく、日本国内のリサイクル事業で既に関係性を構築していた北九州市と日本の環境省の支援を得て、2014年にマレーシア環境局の方々をアミタの北九州循環資源製造所に招くことになりました。実際にその目で製造工程を見てもらったところ、マレーシア国内においてセメントリサイクルのニーズが高まり始めていたということもあり「この事業やアミタの調合技術は、マレーシアの将来に必ず必要になるものだ」と非常に高い評価をいただくことができました。

その後は、現地での事業パートナー探しを開始。プロジェクトリーダーとして、事前調査から市場開拓に携わった大和英一(当時27歳)は当時のことを次のように振り返ります。
「最も困難かつ重要だったのは現地パートナーとの関係性の構築でした。日本をベースとするアミタがマレーシアでリサイクル事業を展開するためには、『この世に無駄なものなどない』という信念を持つアミタの事業に共感しパートナーシップを組んで共に運営してくれる現地パートナー企業、アミタに廃棄物の処理を任せてくれる排出事業者、そしてリサイクルによって製造するセメント原燃料(セメントを生成する際の燃料と原料を兼ねた資源)を使ってくれるセメント会社を探す必要がありました。」

100件以上の現地企業を訪問しながら少しずつ関係性の構築に励んでいた矢先、パートナーシップ締結の話が進んでいたある企業から、突如として契約の破談を言い渡されました。2度目の「撤退」の文字が社員の頭に浮かんだ瞬間でした。新たなパートナー企業が見つからなければ、マレーシアでの事業計画は頓挫してしまう。そんな差し迫った状況において、アミタに手を差し伸べてくれたのが現在のパートナー、ベルジャヤグループでした。ベルジャヤグループはマレーシアの大手財閥企業。大和が飛び込み営業したことがきっかけとなりました。複数回にわたる企業訪問から何とか提案まで持ち込み、4回目の訪問でついにパートナーシップ締結に向けた兆しを感じることができました。ベルジャヤグループの心を動かしたのは、アミタが目指す未来への共感とアミタが長年培ってきたリサイクル経験・実績への信頼。すなわち、これまでのアミタの歴史にあらゆる縁が結びつき、ようやく掴みとることができたチャンスだったのです。

その後、2015年12月にアミタの現地法人とベルジャヤグループによる合弁会社AMITA KUB-BERJAYA KITAR SDN.BHD.(現・AMITA BERJAYA SDN. BHD.)を設立、2017年5月にはセランゴール州にて100%リサイクル工場「AKBK循環資源製造所(現・アミタベルジャヤ循環資源製造所)」を開所しました。開所して間もない頃、リサイクル製品のユーザーであるセメント会社からは「廃棄物でできた原料なんか使いたくない」という声が少なからず上がり、初回の製品出荷から安定利用に至るまでには多くの苦労と挫折がありました。2019年から現地の営業担当として活躍する金本裕司(当時29歳)は納入先となるセメント会社に定期的に訪問し、納品調整やヒアリングを実施、関連企業と継続的で密なコミュニケーションを日頃から心掛けていると言います。

大和英一

※AMITA KUB-BERJAYA KITAR…現在のAMITA BERJAYA SDN. BHD.

循環型ビジネスモデルを世界へ

2017年5月の製造所設立から間もなく4年を迎え、現在はマレーシア国内全体における、資源循環プラットフォームのマーケットリーダーとしてのポジション確立を目指しています。2020年は新型コロナウイルスの影響を受け、廃棄物と製品の入出荷の一時停止などが発生しました。しかし、現地でのリサイクル需要の拡大により、100%リサイクルの資源製造量は2年間で12,000tから29,000tへ約2.5倍増加。同年12月には設備の拡張工事を完了し製造能力は約1.5倍にまで拡大しました。受入量のさらなる増加が見込まれる中、マレーシア国内の資源リサイクルを牽引する存在となるべく新商品の開発や品質の向上に日々取り組んでいます。

金本裕司

さらに今後マレーシアを含むアジア諸国において、持続可能な産業へのニーズが高まることが予測されています。そこでアミタは、リサイクルによる個別の環境課題解決を超えた、サプライチェーン全体の持続性を高める「循環型ビジネスモデル」の構築支援を事業展開の視野に入れています。その実現に向けて、現地の人々や社会の潜在的なニーズを汲み取り、提案の幅を広げていくことを目指しています。
困難な状況にこそチャンスを見出し、新たな価値の創出に向けて日々取り組むアミタの挑戦は、この先も日本のみならずマレーシア、アジア、そして世界を舞台に続いていきます。

内容は2021年4月時点のものです。